still crazy after all these years



カテゴリ:観た映画( 34 )


自分はどっちの側か、という話

・・・で、書きたかった本題は、映画 『キャリー』 を観た、という話。デ・パルマが監督した1976年のほうではなくて、2013年のリメイクのほう。
狂信的な母親のもとで異常な育てられ方をした少女が学校で凄絶ないじめを受けて、芽生えてしまった超能力で街を火の海にする、という話。

原作 (スティーブン・キングの) も好きだし、デ・パルマの映画化も傑作――原作の表現という面でも、その後のデ・パルマ作品にも明らかに受け継がれている手法やカットの数々を確認できるという点でも――だと思っている。 ただでさえ原作ファンはリメイクに対して手厳しくなりがちだ。だけど極力そういう主観は排してリメイク版を観たつもりだし、テーマはある意味で普遍的なものなので、巧く現代風に仕上げてくれるんじゃないかという期待があった。

結論から言うと、全然ダメ。 もう本当にダメ。  脚本が、とか、最後の茶番が、とか色々ケチのつけどころはあるんだけれど、一番ダメなのはキャリーが可愛いことだと思う。

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キャリーを演じるクロエ・グレース・モリッツ――『キックアス』 で有名になったようだけれど、私としては 『モールス』 の、と言いたい――は、キャリーを演じるにはあまりにもかわいい。 最初から目に力がありすぎる。 あれは、真正面から相手の目を見る/見られることに慣れている人間の顔だ。 おどおどと自信なく陰気くさい演技は確かに巧いのだけれど、あくまでも演技としての説得力しか感じられない。
何よりクロエのキャリーを見る観客は、「ちょっとくらい変わってるからって、いじめるのはかわいそう」 と思うだろう。 それこそが、この映画を台無しにしている部分ではないか。

デ・パルマの 『キャリー』 の主演であるシシー・スペイセクが素晴らしいのは――そして恐ろしいのは、「ああ、確かにこんな子ならばいじめられても仕方ないかも」 と観客に思わせてしまう力があったことだ。
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あの映画は、自分がキャリーの側ではなく、むしろキャリーをいじめる側 and/or 傍観する側に近いのだ、という事実を突き付ける。 だから終盤でキャリーが爆発するのシーンが怖いのだ。 普通に主人公に感情移入したならば、あのシーンは爽快のはずなのに、とてもそうは感じられない。 なぜなら自分は修羅場と化したプロムで焼き殺されるほうの立場だと心のどこかで知らされているからだ。

リメイク版 『キャリー』 に、「自分は実は加害者である」 という視点が欠けている象徴ともいえるのが、キャリーをかばう体育の先生の描写。 あの先生はキャリーをなぐさめ、いじめっこたちを叱るのだけれど、原作では彼女の心にもほんの少しキャリーを嫌悪する気持ちがある。 それがリメイク版で全く描かなかったのは、主演の可愛さに次ぐ大失敗だ。

とはいえ、リメイク版が優れていた点もちらほら。 キャリーいじめに加わった後悔と、そして自己欺瞞から、同級生のスーは自分の彼氏をキャリーに貸し出す。 その彼氏の表現はリメイク版のほうがよかった。 「彼女が言うから仕方なく」 の心理と、「俺はスポーツマンだし、人間は公平であるべきだから、みんながやらないようないいことを胸を張ってするんだぜ」 の傲慢さと浅はかさが、よくあらわれていた。 デ・パルマのほうは、彼はキャリーに多少なりと恋心を感じたのかも、と思わせる余地が生じてしまっていたと思う。

そして、リメイク版のキャリーの母親を演じるジュリアン・ムーアは本当に素晴らしい。 これまで母親のことはキャリーの 「敵」 で 「諸悪の根源」 としか見ていなかったけれど、リメイク版ではわりと母親の心理のほうに寄りそう気持ちで見てしまった。 それは私自身の年齢が母親のほうに近くなったせいでもあるけれど、ジュリアン・ムーアが表現する異常さが恐ろしい現実味を持つせいだ。 作品としては残念だけど、この母親を観るためだけでも観賞の価値はあると思う。


あと、現代版ならではの要素が 「キャリーの醜態をスマホで撮影してYouTubeに載せる」 「それをプロムの例の瞬間の寸前にスクリーンで流す」だけだったのは、確かに残酷ではあるけれど、少し物足りないかも。 むしろ現代ならではのいじめの陰湿さみたいなのをもっと出したほうが、映画としては面白いと思うんだけど。




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 4/12の作業記録
 案件A:原稿整理。
 案件H:2枚訳す。
 
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by yumi_in_the_rye | 2014-04-13 19:37 | 観た映画 | Comments(0)

信じている。

生まれ変わりはある、と信じている。
あの世の存在も、臨死体験も、真実だと信じている。

・・・というのは半分嘘で半分は本気。
正確に言うならば、「生まれ変わりはある」 と信じる人がいて、人間にとって 「信じる = 真実」 となるのだ、と思っている。 臨死体験をしたと信じるならば臨死体験をしたのであって、それは 「臨死体験は間違いなく存在する」 とイコール (ここではニアリーイコールと言わずにイコールと言う) だ。  臨死体験とか、その他の怪しげな宗教的事象を当てはめるとやばくなるけど、たとえば 「愛」 とか 「正義」 とかを当てはめれば、わりと誰でもしている 「決めつけ」 だと思う。
(まぁ、本当に臨死体験的なものが存在するかどうか確かめるためには、あの世とか生まれ変わりとか、川の向こうのお花畑でじいちゃんがおいでおいでとか、そういう話を生まれてから一度も、誰からも、どんなメディアを通じても耳にしたことのない人間がそういう体験をする必要があるけど。そしてそんな無菌状態で人間を育てられない以上、これは魔女の証明に近い確認不可能なことだと思うけど)

本当にそうであるか、が重要なのではなくて、
本当にそうであると信じた、それが重要 (もしくは問題) なのだ、という話。
映画 『記憶の棘』 はそういう映画だと思った。

ニコール・キッドマン演じる主人公は10年前に夫を亡くして、ようやく再婚しようとしている。 そこへ10歳の少年が現れて、自分は夫だ、と言いだす。 夫でなければ知らないような事実をいくつも知っていて、何より少年が真剣そのものの顔で愛を語る。

この不思議な話のからくり自体は、終盤にかけてかなりはっきりと整理されて提示されている。 で、そのからくりを踏まえたうえで、なおも 「本当に」 生まれ変わりなのかどうかは確かめようがないので、それは観る者にゆだねられている。 だけど大事なのはそこではない。少年が信じ、主人公が信じた。 信じたからには、それはもはや 「真実」 だ。 そして主人公が信じたことを、つまりは彼女の心が今も前の夫のもとにあることを新しい夫 (再婚相手) もわかってしまったという点において、少年の話は太刀打ちできない「真実」の力を持つ。 少年が主人公に向けたひたむきな愛情も疑いようのない「真実」――たとえ、<ネタバレ→>本当の前夫が浮気をしていたから、少年が主人公を愛すること自体が、彼が生まれ変わりではないという「証拠」であると<←>認めざるを得ないとしても。

どう信じるか、または、どう信じることにするか。 それは良い意味で幸せを選びとる力にもなるだろうし、この映画のように悲しみにとらえられることにもなる。 真実であるかどうかよりも、「信じた」 ことの力は大きい。



少年ショーンを演じたキャメロン・ブライトという子が、『シックスセンス』 の頃のオスメントくんみたいないかにも繊細そうな顔じゃなくて、『アバウト・ア・ボーイ』 の仏頂面坊主によく似た下ぶくれ顔なのが、むしろ否定しがたい説得力があっていいと思った。 だけど、ニット帽の仏頂面坊主ことニーマン・マーカスが、『シングルマン』 ではコリン・ファースを誘惑するお耽美系美青年になってるからなぁ。 キャメロンくんも、実はそんな未来が待ってるかと思うと、楽しみで楽しみで。

ニコール・キッドマンは相変わらず美しいけれど、ショートカットは似合わないと思った。 美人はショートでも必ずきれいなものだと思っていたけれど、案外とそうでもないのね。


そうそう、この邦題は秀逸。原題Birthよりも内容を見事に表している。

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4/3の作業記録
  案件B:読んでる。

 4/4の作業記録
  案件B:読んでる+企画書作成。

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by yumi_in_the_rye | 2014-04-04 18:37 | 観た映画 | Comments(0)

旅の真ん中

冒険には遅れずに行かなくちゃ。『ホビット 竜に奪われた王国』 を観てきた。

『マトリックス』 も 『スターウォーズ』 も、そして 『ロード・オブ・ザ・リング』 自体もそうだけど、三部作の真ん中というのはよくも悪くも消化不良な印象を残さざるを得ないので、1年前に観た前作よりも今回の点が辛くなるのは否めない。 そもそもの構成がそうだから仕方ないんだけど、国を奪われた王とホビットという取り合わせも、竜と戦うという展開も 『LO
TR』 と同じだから、どうも既視感があって意外性に欠けてしまう。 途中でびっくりするほど絵が 「合成です!CGです!」 という感じになって興ざめしたし――PJ、パーフェクトを追求しすぎて裏目に出てやしないか?

そんな中で印象深いのは、『LO
TR』 のフロドは2作目で既に心を病み始めた顔をしていたのに対し、今回のビルボは変人からヒーローへと成長しつつも、あくまで滑稽さを保っていること。 最終的に彼は変人さを増して村に戻るわけだけど、同じ指輪の冒険を経ても、おそらくフロドのように心の一部を失いはしないのだ。 そう考えれば、『ホビット』 でいったん撃退するであろう悪の存在が、『LTOR』 に至るまでにいかに膨れ上がっていったか、いやでも察せざるを得ない。 今回の旅の成功はその後の悲劇を作るにすぎないのだ、とそんなことを思いながら旅を見守るのは少しせつないよ。

オーランド・ブルームが演じるレゴラスがすごく性格が悪くて笑った。 この頃に比べれば、のちのドワーフ嫌いは随分改善されていたのね。


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 3/1の作業記録
  案件A:66枚チェック。
 
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by yumi_in_the_rye | 2014-03-02 21:31 | 観た映画 | Comments(0)

新しい立体感

そういえば少し前だけど 『ゼロ・グラビティ』 を観た。

3Dというものが登場してからずいぶん長いこと、その特長は 「飛び出してくる」 もの だと認識されてきた。 映画の趣向としては、いきなり目の前に迫って来て驚かせる、まぁコケ脅し的な使い方ばっかりだったと思う。 で、『アバター』 あたり から、むしろ3Dによって 「深さ」 や 「奥行き」 のほうが表現されるようになって、スクリーンから何かが出てくるというより、こちらがスクリーンの奥へ落ち 込んでいくような臨場感が体感できるようになった。

無重力状態に投げ出される恐怖を描いた 『ゼロ・グラビティ』 は、重力がないゆえに飛び 出すでも落ちるでもない、全く新しい感覚を味わわせるという新境地に成功している。 しかも、「目の前に飛び出してくる」 「自分が落ち込む・吸い込まれる」 ならば現実に体験することもありえるけれど、無重力状態を一般人が体験することは皆無といってもいい (身動きが自由にならない様子は、ダイビングの感覚に少し似ている気がしたけど)。 つまり、リアルかどうかは本当はわからないことをリ アルに感じたと思わせる、という、これは実に野心的な試みに成功した映画だ。

個人的にはストーリーは物足りない。 話に深みを持たせるためには、主人公が地上にいたときの場面 (特に娘とのかかわりを示す何らかの布石) と、足元を印象づける絵が絶対に必要だったと思う。 彼女はあきらめて 死を待つ気持ちになるほうがむしろ自然なのだ、と思わせるトリガーがもう少し必要だった。
だけど逆説的ながら、そうした場面を入れていたら、この映画は絶対に冗長で 「ふつう」 な作品になっていたに違いない。 そうなってしまば、この作品はもはや二流だ。 だから前後を大胆に切り捨てて、見せたい絵だけにあえて絞りこんだのは賢い戦略だと思う。

この映画のサンドラ・ブロック、ちょっとヒラリー・スワンクに似てる気がするのは、この作品の絵がヒラリー主演の 『ザ・コア』 と少しばかり似ているせいかも(クオリティは全然違うけど)。 サンドラ、思うようにならない乗り物に苦戦させられるパターンは20年ぶりの再来。 乗り物がバスから宇宙船に進歩したあいだに、彼女もいい感じに若さで勝負しない役者になった。


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 2/28の作業記録
  案件D:28枚訳す。
 
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by yumi_in_the_rye | 2014-03-01 23:10 | 観た映画 | Comments(0)

2013年に観た映画(後半)

結局2013年は105本。わー、考えてみたら1本も映画館で観てない!コンテンツと箱を支えるためにももう少し足を運ばなきゃ・・・。

2013年に観た映画(後半)
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by yumi_in_the_rye | 2013-12-31 16:44 | 観た映画 | Comments(0)

2013年に観た映画

今年観た映画は100本いかなかったなぁ、と思っていたのだけれど、途中で自己カウントを間違えていたらしく、数えなおしたら100本越えてた。
たくさん仕事をして、たくさん映画を観られたなら、それは私にとって良い1年の条件を充分に満たしてる。来年も楽しめますように。

2013年に観た映画(前半)
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by yumi_in_the_rye | 2013-12-31 15:24 | 観た映画 | Comments(0)

2012年に観た映画 (前半)

今年は資料として映画を観る仕事が多かったこともあって、気付いたら100本達成してた。 2012年に観た映画(基本的に初見のみ)、107本。 個人的なベストは、劇場で観たのでは『007』、DVDでは『美しい人』、『告発』、『CUT』、『SHAME』という感じ。

ホームプロジェクターを買いたい買いたいと言いつつ、機種を決め切れなくて未購入。 来年は自宅映画館の環境を整えて、もう少ししっとりとゆっくりと、映画を観るだけの時間を作りたい。
積ん読ならぬ「積ん見」だった映画リスト、「あ」から見て行くチャレンジは、今「し」まで来た。「わ」まで、多分あと2年かかるな。楽しみ。

そういうわけで、皆さま、よいお年を。

文字数オーバーしちゃった。ので半分にわけます。観た映画1-50)
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by yumi_in_the_rye | 2012-12-31 22:45 | 観た映画 | Comments(2)

2012年に観た映画 (後半)

後半です。

2012年に観た映画 51-106
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by yumi_in_the_rye | 2012-12-31 22:42 | 観た映画 | Comments(0)

2011年に観た映画

昨年観た映画、75本。
年間100本を目指してます、とは言いにくい数字だけど、映画館にはほとんど行けなかったけど、何本か生涯忘れないと思える作品にも出会えた。

筋は知ってるけど実はちゃんと観ていない、というのが多いので、2012年はなるべくそういうのも拾っていきたい。たくさん観る時間があるといいんだけど。




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75本の映画リスト(一部コメントつき)
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by yumi_in_the_rye | 2012-01-01 17:08 | 観た映画 | Comments(0)

2010年の記録

自分用の備忘録です。


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2010年に訳した量:仕上がり400字で4074枚

リーディングした原書:19冊 (うち出版が決まったのは2冊)

読んだ本:34冊

走った距離:508キロ

DVDで観たドラマ:5本
 『24』シーズン7
 『ターミネーター サラ・コナー・クロニクル』 シーズン2
 『LOST』 シーズン7
 『バーンノーティス 元スパイの逆襲』 シーズン1、シーズン2
 

2010年に観た映画
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by yumi_in_the_rye | 2010-12-31 18:59 | 観た映画 | Comments(0)


最近の清水ジャンプ

by yumi_in_the_rye
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MYSELF:
Yumi
---Translator (E > J)

翻訳者です。
下記に掲載している
本の翻訳に関わりました。

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※過去の記録はいいかげんこっぱずかしくなってきたので非公開にしています。
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