still crazy after all these years



浮世のバランス

少し前だけど 『マイ・インターン』 を見た。
アン・ハサウェイがEコマース企業の経営者で、そこにシニア枠のインターンとしてデニーロが入って来る、という。

この2人が主演というだけでもうオールオーケーだし、ストーリーもディテールもこの手の作品として極めて満足なのだけれど、それにつけてもこの映画は幸せな作品だな、と思う。

そもそも、ばりばりの女性エグゼクティブのもとに、全く畑の違う新人社員が入ってきて――という設定にした時点で、この映画が 『プラダを着た悪魔』 と比較されて評価される運命は決まっていた。だとすれば、関係ない役者で 「似たような映画」 どまりにするより、あえて 『プラダ』 のアン・ハサウェイを正反対の役柄にキャスティングして、はっきりあの映画の現代版というポジションにしたほうが話題的にも当たるに決まっている。

で、そのキャスティングをするあたり、『プラダ』 以降のアン・ハサウェイがキャリアとしてもルックスとしてもめざましく成長していたという事実は、この映画にとって本当に幸せなことだったと思えてならない。 彼女があの映画以降は鳴かず飛ばずで、「あの人は誰」 状態だったとしたら、ここで彼女を起用するメリットは何もない。 商業的な話題性だけでなく、作品全体の魅力や説得力が格段に落ちることは目に見えている。 彼女が明らかに女優として成功して、現に今きらきらしていて、そして今回の 『マイ・インターン』 のような役柄につくことで、アン・ハサウェイだけでなく 『プラダ』 の 「エミリー」 が成長してきたかのような感覚まで抱かせるので、それがこの映画の鑑賞に奥行きを与えてくれる。

一方で、これは間違いなくアン・ハサウェイ自身にとっても幸せなことだった。 彼女が 『プラダ』 で終わらず (商業的成功という意味でも、役柄のバリエーションという意味でも)、ヒットも不発も含めたくさんのキャリアを積んできた上で、こんなふうに自分自身との比較を披露することができるというのは、女優冥利につきるんじゃないかな。 初期にヒットした数本の作品にしがみつくだけの役者だったとしたら、『マイ・インターン』 でどんなにきれいなルックスを見せても、そこに説得力のある魅力を感じさせるのは多少難しくなっていたと思う。

『マイ・インターン』 の監督ナンシー・マイヤーズは、女性が思う 「リアル」 の部分と、「そこは夢を見せてよ」 の部分のバランスをとるのがうまい。 『ホリデイ』 なんか、特にそうだった。
仕事に打ち込んでいたら恋人が若い女と浮気して、思い切った気分転換のために同じ境遇の女性と意気投合して家を交換する約束をして (→ここまでは、女性が思う「リアル」「わかる」の部分)

で、キャメロン・ディアスがケイト・ウィンスレットの家で休暇を過ごしていたら、そこでジュード・ロウと出会って(→ここは「そこは夢を見せてくれなきゃ」の部分)

ジュード・ロウはやっぱりムカつくプレイボーイだけど (リアル)
実は涙もろくてかわいかったりなんかして (夢)
この映画の場合は、さらにキャメロンのストーリー自体が 「夢」 で、ジャック・ブラックと出会うケイト・ウィンスレットのほうが 「リアル」 という構造にもなっているところが、本当によくできていた。

そう考えると、『マイ・インターン』 も絶妙だ。
女性が自分の好きなことをきっかけに起業して成功して、だけど母親と周囲の専業主婦の無理解や、協力的に見える夫の裏切りがあって、仕事の上では多少自分の力不足を感じていて、だけど頑張りたくて――と、ここは女性が思う「リアル」

で、そんな場面にロバート・デニーロみたいな素敵シニアが入ってきて、でしゃばりすぎずにスマートに、かつキュートに父親代わりを果たしてくれるあたりは、「夢」の部分 (ここに口うるさくて無神経でマナー知らずの老人が入ってきたらダメなのだ)
まあぶっちゃけご都合主義なんだけど、そのバランスのよさが、この映画を見ていて気持ちよくなる作品に仕立てている。 「リアル」 の部分も本当のリアルじゃなくて、女性が 「これがリアルだと思いたいリアル」 をくすぐっているところが憎いのだ。



作品は作品単体で作る・鑑賞するものだけれど、必ずしも続編ではない別の作品に自然と結びつきが生じて、そこまでの軌跡が実を結んだり、花を添えたりすることもある。
例によって役者と訳者の強引すぎる連想で、自分の仕事に引き寄せて解釈するわけだけど、私もそうでありたいと思う。



--------------
7/30-31の作業記録
 案件E:ゲラ見てる。
 案件J:6枚訳す、50枚見直し。
--------------------------------------------------------
[PR]
by yumi_in_the_rye | 2016-08-01 23:09 | 観た映画 | Comments(0)
<< わたしが梅干しBBAになっても 謝りあう >>


10歳かな

by yumi_in_the_rye
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カテゴリ
MYSELF:
Yumi
---Translator (E > J)


翻訳者です。
下記に掲載している
本の翻訳に関わりました。

メールはyumi_in_the_rye「あっとまーく」excite.co.jpへ。 

コメントは現在は承認制です。

初めてコメントを書いてくださるときは、「はじめまして」的な一言を添えて下さると、大変に安心いたします。「通りすがり」や「名無し」、それらに準ずるハンドルネームは避けていただけると嬉しいです(嫌いなので)。



※過去の記録はいいかげんこっぱずかしくなってきたので非公開にしています。
ライフログ
タグ
最新のコメント
ありがとうございます。そ..
by yumi_in_the_rye at 21:52
yumiさん。 ご無沙..
by hamuneko7 at 20:06
わー、コメントありがとう..
by yumi_in_the_rye at 20:59
上原先生、こんにちは! ..
by takako ando at 13:06
そうなんですよ、「ぜひ大..
by yumi_in_the_rye at 20:28
ブログパーツ