still crazy after all these years



違う世界

『毛皮のヴィーナス』 を観た。
寺山×美輪の舞台は 『毛皮のマリー』、「五番街のマリー」 は高橋真梨子、横浜にいたのはメリーさん。

・・・のっけから脱線してどうする。 『毛皮のヴィーナス』 は、ポランスキー監督のフランス映画。
さすがポランスキー、エロスというより背徳と倒錯感あふれる密室劇がすばらしい。『ローズマリーの赤ちゃん』 『テス』 のように、本当の意味で 「密室」 ではないのに閉塞感をありありと感じさせる作品も多いけど、この 『毛皮のヴィーナス』 は本当に舞台小屋だけで展開される。

これもポランスキーお得意の――だと思うんだけど、他に何があったか思い出せない――劇中劇スタイルで、登場するのは芝居 「毛皮のヴィーナス」 の配役を決めようとする脚本家と、オーディションを受けに来た女優の2人。劇中劇のほうは女王様と奴隷の物語なんだけど、実は女王様は男に従属する形でSを務めている。 その劇中劇を、演出家と女優がオーディションとして演じていく。 つまり
・演出家 (支配者) と女優 (被支配者)
・劇中劇の中の女王様 (支配者) と奴隷 (被支配者)
という食い違う二重構造があり、さらに劇中劇の中で支配関係が逆転し、劇の外でもいつのまにか支配関係が逆転し、さらには2人が男女の役を入れ替えたり戻したりしながら劇中劇を演じるというとても複雑な展開で、これが本当に面白く、途中からはもう本当に目が離せないスリリングな展開になっていく。

加虐と被虐の関係および欲望は紙一重で同じものなのねぇ、というのは 『セクレタリー』 や 『クラッシュ』 を観たときにも思ったけど、この映画 『毛皮のヴィーナス』 では、ときどき本当に 「今どっちがどっちなのか」 というのがわからなくなって、その秀逸さに舌を巻く。
後半にいくにつれ混然としてくるので、表情や格好だけでは判断がつきにくく、どちらかが女言葉・男言葉の台詞を喋って初めて 「あ、今はそっちなのね」 と気づかされる場面が多かったんだけど、字幕を担当された訳者さんはこれをコンテキストから解釈されたのかしら。

第2外国語でフランス語はとらなかったので全くわからないのだけれど――第2外国語でとったドイツ語はわかると言いたいかのような、語弊ある表現をあえて放置――フランス語の場合、たぶん文法的に、話者が男または女であることを示すヒントがあると思うので、それで判断がついていたのかな。

英語の場合、使うボキャブラリーで話者・著者の性別を判断できることももちろんあるけど、やっぱり台詞単独ではわからないことのほうが多い気がする。

言語が違うのはもちろんだけど、大きく言えば同じ翻訳者でも、出版・実務と、映像とではかなり畑が違うと感じている。 だけど最近ではそこを兼ねている方もちらほら増えている印象もあって、興味深い (その点で今一番気になるというか、一度お話をうかがってみたいのは、『ターミネーター ジェネシス』 を担当された樋口武志さん。 お若いし、という点も気になる理由の1つ)
そういうクロスボーダーな広がりは、私自身にはちょっと無理そうなので、せめて交流する機会があればいいんだけれど。というか、畑の違う方にも色々話を聞くようにしなきゃ、と思うわけ。



--------------
5/4の作業記録
 案件A:7枚訳す。
 案件F:19枚訳す。

5/5の作業記録
 案件A:6枚訳す。
 案件F:7枚訳す。
--------------------------------------------------------
[PR]
by yumi_in_the_rye | 2016-05-06 20:12 | 観た映画 | Comments(2)
Commented at 2016-05-08 00:58 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by yumi_in_the_rye at 2016-05-08 21:13
わー、コメントありがとうございます!
いつも私と私の本を見守ってくださり、応援してくださって、心から感謝しております。

『毛皮の』は元は英語劇だったんですねー。舞台があったのは知っていたのですが、あまりに今回のフランス設定がどんぴしゃりだったので、英語だったとは思い及びませんでした。

>というより、私はどっちがどっちかわからなくなることはなかったですが。

私は頭が悪いので(笑)。
というか、わからなくなって困るというより、「おー、ここでそう来たかー!」と驚き舌を巻くという感じでした。
色々と教えてくださってありがとうございます。さすが博識ですね。

>私よりもお役に立てそうな映画界の方が見つかったようで、

いえいえ、鍵コメさんは別格です。これからも拝読します。

>氏の同期なので、その点からも関心を持たせていただいてました。

おおお、そうなんですねー!今度会ったら聞いてみます!
そんなところで接点があったとは、そして私に関心を持っていただいたとは、本当に嬉しいです。「2次のつながり」が「1次のつながり」になる日が来ることを願っています。

鍵コメさんのような方がいらっしゃってくださるから、私もがんばれるのだと思います。ありがとうございます。いつか気に入っていただけるように精進したいと思います。
<< 番組の途中ですが野球中継です 2016年の苺大福(3) >>


最近の清水ジャンプ

by yumi_in_the_rye
カテゴリ
MYSELF:
Yumi
---Translator (E > J)


翻訳者です。
下記に掲載している
本の翻訳に関わりました。

メールはyumi_in_the_rye「あっとまーく」excite.co.jpへ。 

コメントは現在は「非公開」を選択できます。

初めてコメントを書いてくださるときは、「はじめまして」的な一言を添えて下さると、大変に安心いたします。「通りすがり」や「名無し」、それらに準ずるハンドルネームは避けていただけると嬉しいです(嫌いなので)。



※過去の記録はいいかげんこっぱずかしくなってきたので非公開にしています。
ライフログ
タグ
最新のコメント
>しゅうすけさん ..
by yumi_in_the_rye at 21:29
いよいよですね! これ..
by しゅうすけ at 09:49
わあ、ありがとうございま..
by yumi_in_the_rye at 16:31
こちらこそ昨日はありがと..
by yumi_in_the_rye at 16:34
先生、今日はどうもありが..
by ayu at 21:58
ブログパーツ