still crazy after all these years



自分はどっちの側か、という話

・・・で、書きたかった本題は、映画 『キャリー』 を観た、という話。デ・パルマが監督した1976年のほうではなくて、2013年のリメイクのほう。
狂信的な母親のもとで異常な育てられ方をした少女が学校で凄絶ないじめを受けて、芽生えてしまった超能力で街を火の海にする、という話。

原作 (スティーブン・キングの) も好きだし、デ・パルマの映画化も傑作――原作の表現という面でも、その後のデ・パルマ作品にも明らかに受け継がれている手法やカットの数々を確認できるという点でも――だと思っている。 ただでさえ原作ファンはリメイクに対して手厳しくなりがちだ。だけど極力そういう主観は排してリメイク版を観たつもりだし、テーマはある意味で普遍的なものなので、巧く現代風に仕上げてくれるんじゃないかという期待があった。

結論から言うと、全然ダメ。 もう本当にダメ。  脚本が、とか、最後の茶番が、とか色々ケチのつけどころはあるんだけれど、一番ダメなのはキャリーが可愛いことだと思う。

e0078326_18553998.jpg
キャリーを演じるクロエ・グレース・モリッツ――『キックアス』 で有名になったようだけれど、私としては 『モールス』 の、と言いたい――は、キャリーを演じるにはあまりにもかわいい。 最初から目に力がありすぎる。 あれは、真正面から相手の目を見る/見られることに慣れている人間の顔だ。 おどおどと自信なく陰気くさい演技は確かに巧いのだけれど、あくまでも演技としての説得力しか感じられない。
何よりクロエのキャリーを見る観客は、「ちょっとくらい変わってるからって、いじめるのはかわいそう」 と思うだろう。 それこそが、この映画を台無しにしている部分ではないか。

デ・パルマの 『キャリー』 の主演であるシシー・スペイセクが素晴らしいのは――そして恐ろしいのは、「ああ、確かにこんな子ならばいじめられても仕方ないかも」 と観客に思わせてしまう力があったことだ。
e0078326_18590142.jpg
あの映画は、自分がキャリーの側ではなく、むしろキャリーをいじめる側 and/or 傍観する側に近いのだ、という事実を突き付ける。 だから終盤でキャリーが爆発するのシーンが怖いのだ。 普通に主人公に感情移入したならば、あのシーンは爽快のはずなのに、とてもそうは感じられない。 なぜなら自分は修羅場と化したプロムで焼き殺されるほうの立場だと心のどこかで知らされているからだ。

リメイク版 『キャリー』 に、「自分は実は加害者である」 という視点が欠けている象徴ともいえるのが、キャリーをかばう体育の先生の描写。 あの先生はキャリーをなぐさめ、いじめっこたちを叱るのだけれど、原作では彼女の心にもほんの少しキャリーを嫌悪する気持ちがある。 それがリメイク版で全く描かなかったのは、主演の可愛さに次ぐ大失敗だ。

とはいえ、リメイク版が優れていた点もちらほら。 キャリーいじめに加わった後悔と、そして自己欺瞞から、同級生のスーは自分の彼氏をキャリーに貸し出す。 その彼氏の表現はリメイク版のほうがよかった。 「彼女が言うから仕方なく」 の心理と、「俺はスポーツマンだし、人間は公平であるべきだから、みんながやらないようないいことを胸を張ってするんだぜ」 の傲慢さと浅はかさが、よくあらわれていた。 デ・パルマのほうは、彼はキャリーに多少なりと恋心を感じたのかも、と思わせる余地が生じてしまっていたと思う。

そして、リメイク版のキャリーの母親を演じるジュリアン・ムーアは本当に素晴らしい。 これまで母親のことはキャリーの 「敵」 で 「諸悪の根源」 としか見ていなかったけれど、リメイク版ではわりと母親の心理のほうに寄りそう気持ちで見てしまった。 それは私自身の年齢が母親のほうに近くなったせいでもあるけれど、ジュリアン・ムーアが表現する異常さが恐ろしい現実味を持つせいだ。 作品としては残念だけど、この母親を観るためだけでも観賞の価値はあると思う。


あと、現代版ならではの要素が 「キャリーの醜態をスマホで撮影してYouTubeに載せる」 「それをプロムの例の瞬間の寸前にスクリーンで流す」だけだったのは、確かに残酷ではあるけれど、少し物足りないかも。 むしろ現代ならではのいじめの陰湿さみたいなのをもっと出したほうが、映画としては面白いと思うんだけど。




--------------
 4/12の作業記録
 案件A:原稿整理。
 案件H:2枚訳す。
 
--------------------------------------------------------
[PR]
by yumi_in_the_rye | 2014-04-13 19:37 | 観た映画 | Comments(0)
<< 世界は傾いている 2013-14年冬の苺大福(8) >>


最近の清水ジャンプ

by yumi_in_the_rye
カテゴリ
MYSELF:
Yumi
---Translator (E > J)


翻訳者です。
下記に掲載している
本の翻訳に関わりました。

メールはyumi_in_the_rye「あっとまーく」excite.co.jpへ。 

コメントは現在は「非公開」を選択できます。

初めてコメントを書いてくださるときは、「はじめまして」的な一言を添えて下さると、大変に安心いたします。「通りすがり」や「名無し」、それらに準ずるハンドルネームは避けていただけると嬉しいです(嫌いなので)。



※過去の記録はいいかげんこっぱずかしくなってきたので非公開にしています。
ライフログ
タグ
最新のコメント
>しゅうすけさん ..
by yumi_in_the_rye at 21:29
いよいよですね! これ..
by しゅうすけ at 09:49
わあ、ありがとうございま..
by yumi_in_the_rye at 16:31
こちらこそ昨日はありがと..
by yumi_in_the_rye at 16:34
先生、今日はどうもありが..
by ayu at 21:58
ブログパーツ