still crazy after all these years



fearless

彼を初めて見た場所は、私がオーストラリアにいた頃、映画館の前に貼ってあったポスターだった。 QUEENの曲をモチーフに使った映画のタイトルには、別にそれほど惹かれるところはなく、「この俳優、オーストラリア人なんだって」 と聞いて、「へー」 と思っただけ。 当時ガイ・ピアースに熱を上げていたので (今でも好きだけど)、ガイ・ピアースやカイリー・ミノーグと同じくオーストラリアの昼メロでメジャーデビューしたという彼のことは、なんとなく将来が楽しみな俳優として記憶に残った。 でも、その後は特に彼をピックアップして注目することはなく、ひとりの俳優として名前を知っている (プラスの印象は持っていたけど) 程度だったように思う。

そして 『ダークナイト』 のジョーカー。 強烈すぎるキャラクターに圧倒され、「この役者は誰だろう?」 と驚いた。 いや、もちろん誰なのかはわかっていたけど、それでも 「誰だろう?」 と思わずにはいられない――バットマンにはクリスチャン・ベイルを感じ、トゥーフェイスにはアーロン・エッカートを感じるのに (それは悪いことではなかったけど)、ジョーカーは、ただジョーカーだった。 ジャック・ニコルソンのリメイクではなく。 また、ジャック・ニコルソンが演じたジョーカーには 「ジャック・ネイピア」 という人間だった頃の過去がちらりと見せられていたけれど、そうした背景を微塵も感じさせず。 ましてや、『ROCK YOU!』 の騎士や、『ブロークバックマウンテン』 のカウボーイに扮した、ヒース・レジャーでもなく。
――そこにいるのは、ただ、ジョーカーだった。

この役者は誰だろう。 訳しながら、出演作を確認しながら、私はずっとそんなふうに考え続けていたように思う。
そんな彼のことを、私たちはいったいどれだけ知ることができるだろうか。本人は以前、「自分が怖いと感じることに取り組んでいきたい」と話したことがある。

「ハードルを作って、それを乗り越えていきたいんだ。新しい企画に対して不安を感じていたいし、実際いつだって不安になる。何かの仕事で役をもらうと、僕なんかが引き受けるべきじゃなかったと確信してしまう。それなのにできるとごまかしてしまった、本当はできないのに、どうしたらいいかもわからないのに――そんなふうにしか思えなくなる。ものすごい不安があって、それが、仕事に感じる興奮もすっかり押し流してしまうんだ」


1月23日に公開される映画 『Dr.パルナサスの鏡』 も、「彼は (主人公は/演じた役者は) 一体誰だったんだろう」と思わずにはいられない映画だ。・・・・・・そして、彼の命日である1月22日に発売される 『ヒース・レジャー追悼写真集』 は、その答えを垣間見せる本かもしれない。

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そういうわけで、来年の1冊目、通算9冊目となる訳書は、1月22日発売の 『ヒース・レジャー追悼写真集』 です。 限定3000部ということで、買いたい場合は予約が必要かもしれず、早めに告知いたします。 3000部なんて少なかった!と思わせることができればいいんだけど。

版元のページはこちら

そしてなんと、『Dr.パルナサスの鏡』 公式ウェブサイト(←音出ます)のNEWSのページにも。(これがトップページに出ているうちに、ブログで書きたいと思ったの)

というわけで、1ヶ月も前倒しのお知らせですが、こちらもどうぞよろしくお願いしますっ!

(推敲にあたっては、ほぼ同時期に訳書を出版される翻訳家、保科京子さんの力を借りました。この場を借りて厚く、いや熱くお礼を申し上げます)
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by yumi_in_the_rye | 2009-12-25 10:36 | 訳した本 | Comments(4)
Commented at 2009-12-25 12:08 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by yumi_in_the_rye at 2009-12-25 13:25
おおっ、発売日が正式確定したんですね。ということは「(仮)」もフィックスした頃でしょうか? 同じ組の者(←やくざっぽい)から3冊ほぼ同時発売なんて素敵すぎます。
Commented by 寄せる波 at 2009-12-26 13:24 x
ヒースレジャーの訃報について、ジャックニコルソンがコメントをしていた中に、かつて自身の扮したジョーカー役について言及していました。
ジャックニコルソンは素晴らしい役者だと思います。しかし、ヒースレジャーのジョーカーと、ジャックニコルソンのジョーカーに限って言えば、その密度に極めて大きな違いがあるように感じました。
ジャックニコルソンは人並み外れた才能と努力によってジョーカー役を演じたのに対し、ヒースレジャーはyumiさんの仰る通り、ジョーカーそのものになってしまったのだと思いました。その理由は随分前にも書きましたが、話し方、歩き方、目の動き、しぐさのどれをとっても狂気が滲んでいたからです。
恐らく、ヒースレジャーは才能溢れるハリウッドスターの中においても、ジェームス・ディーンや松田優作の様に後世語り継がれる天才として映画史に永永と遺ると思います。かたや、キャメロンディアスの様に、闘っているにも関わらず、戦士には到底見えない凄さもまた、評価されるに値することだと思っています。
つまり、そんな仕事に関わっていけるyumiさんスゴイ。しかし、3000部とは、少なすぎじゃありませんか・・・。
Commented by yumi_in_the_rye at 2009-12-26 15:32
ありがとうございます。
『シャイニング』や『ウルフ』(バットマンより後だけど)をやったジャック・ニコルソンがジョーカーに扮するというのは、ある意味で自然で、なんというか安心して怖がれる気がするのです。ところがヒースの場合、彼のどこからあの狂気が出てくるのか全く予想もつかない。底の見えない「空恐ろしさ」というものをつきつけてくるジョーカーでした。ヒースの「底知れなさ」を感じるとともに、彼がこれを引き出せると確信したクリストファー・ノーラン監督の慧眼にも舌を巻きます。

ほんと、3000部なんて慎重すぎた、という結果になればいいんですけど。私の手元にもまだ現物は来ていないので、楽しみにしています。
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