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初めての出版翻訳【ノルマの立て方】

唐突ですが、初めて本を1冊訳すことになったときのノルマの立て方について説明する機会があったので、ここに再掲します。
これは私のやり方なので、当然ながら、他の翻訳者さんのノルマの立て方は違います。まあ、スケジュールの作り方が見当もつかないという状態なら、これも参考になるかも、という程度でね。


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(1)ボリュームの把握

・原文をデータで受け取っている場合

WORDならそのまま、PDFならテキストをコピーしてWORDに貼るなどして、単語数をカウントします。
奥付、目次、索引、参考文献リスト、PDFならヘッダーとフッターなどはカットしてカウントすること。

・原文が紙の場合

1行あたりだいたい平均的に何ワード、1ページあたり詰まってる行がだいたい何行、というのを目視で数えます。
心配なら数ページほど単語数を計算して平均を出して、それを本文の全ページ数で掛け算。
(章見出しのページは抜いたり、半分しか埋まってない頁は0.5とするなど、調整はざっくりでいいですが、まぁ多めに見積もっておくのが無難かも)


(2)量の計算

・原文ベースでノルマを立てる場合→そのまま

・訳文ベースでノルマを立てる場合(私はたいていこっち)
  「単語数×2.5=文字数」で、仕上がり訳文の推測を立てます。
 (IT系やファッション系など、カタカナが多くなりそうなのは×3くらい)

 ※私は、さらに「文字数÷400=枚数」で把握します。
 原稿用紙1枚相当で考えるやり方は、たぶん古いのでしょうけれど
 (私だって原稿用紙で納品してた時期なんかないけど)
 ここでは「・・・枚」で記述します。文字数で把握したい方は×400で換算してください。


ここでは原文が6万words程度と仮定します。6万×2.5÷400=仕上がり375枚になる推算です。
構成は序章や終章を含めて全10章とします。


(3)日数の確認
締切までだいたい3カ月半、15週あると仮定します。

このとき重要なのはバッファを入れて予定を組むことです。
1週間は7日ではなく5日であると考えます。平日4日と週末1日しか存在しません。
(どうせ後ろのほうでバッファはつぶれるけど)

3か月半で、15週として、
5日×15週=75日。

10章それぞれの突合せチェックに各1日かけるとして、10日。
最終納品の日にヨコからタテになる(訳しあがる)ようではダメなので、お尻に見直しする期間を最低5日(ノルマが崩れることも高確率で起きるので、それを想定した余裕としても)。

75日-15日=60日。

・原文ベースでノルマを立てる場合
原書ページ数を日数で割って、1日に何ページ(何words)進めればいいか把握する。

・訳文ベースでノルマを立てる場合
375枚を日数で割ります。375/60=6.25枚。

ノルマは1日に6枚ちょっとです。
ただし厳密に1日6枚と考えるのではなく、週で30枚ちょい仕上げると考えて、帳尻をとればOK。(途中で突合せチェック日が入るので、当然ずれこんでいくけれど、だいたいこれくらいで考える。ただし帳尻をとるスパンをあんまり長くしないこと)


(4)進行中はつねにdoneとmore to goを確認
単語数、ページ数、文字数など、自分が基準とする数値で、つねに一定して進捗を記録します。



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なんとなくイメージ浮かぶでしょうかね。
状況によって/本によって/同時進行案件によって、もろもろアレンジを入れていきます。

原文ベースでノルマを立てるにしても、訳文ベースでノルマを立てるにしても、一番重要なのは、常日頃から自分はどれくらい訳せるのか、1日にどれくらいの時間をかけられるのか、数字で把握しておくことです。
(私は仕上がりベースで把握するので、だから仕上がりでノルマを立てる、というわけ)

要するに、「今日なんとなくがんばれるところまで」みたいな、漠然とした進め方はしないほうがいいよ、という話です。
つねに具体的に進み具合を把握しながら。それさえ踏まえていれば、自分のやりやすいスケジュールの作り方でいいと思います。

ちなみに、「6万wordsで3~4カ月」という想定は、軽めのノンフィクションで、まぁまぁ現実味のある数字だと思います。
(もうちょっと厳しいことのほうが多いけど)
なので、翻訳学習中の方の練習として、これでノルマを組んで1冊訳し上げてもいいかも。


こんな感じ。数字間違ってたら訂正しまーす。





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7/31の作業記録
 案件A:3枚訳す。
 案件D:5枚訳す+46枚チェック。
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Commented at 2017-08-02 14:55 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by yumi_in_the_rye at 2017-08-02 15:44
ヒントにしていただければとっても嬉しいです!ご自分のやりやすいようにうまく利用してくださいましね。 
Commented by hayama at 2017-08-04 18:15 x
上原先生、こんにちは。
ちょうど、ペース配分について悩んでいたので
わー!と感動しながら読ませていただきました。
貴重な情報、ありがとうございました!
これからコンテストなどにも参加してみて、
いろいろと動いていこうかと思っています。
それでもしもチャンスが来たら、ドキドキしながらも
思いきって飛び込んでみようか、と(^^;
先生からおしえていただいたことを活かして、
良い本が出せるように、がんばります。
Commented by yumi_in_the_rye at 2017-08-04 23:22
こんにちは!コメントありがとうございます。
参考にしていただけたのでしたら幸いです。ペースとノルマづくりは人それぞれなので、ご自分に合うようにうまく采配なさってくださいね。良い本を訳されるのもきっと間近だと思いますし!
Commented by hayama at 2017-08-05 14:13 x
ありがとうございます!
そうだといいなぁ^^
Commented by RB at 2022-06-18 10:25 x
先生、貴重な情報のシェアをありがとうございます。
勉強会の範囲の倍の量を一日で訳せなければ、仕事には厳しいということ、自分の翻訳のスピードの遅さが一番の悩みです。プロの厳しさを実感します。決めた時間で量をこなすことをやっていかないといけないですね。
Commented by yumi_in_the_rye at 2022-06-18 13:39
> RBさん
古い記事を読んでいただけて嬉しいです。

量やスピードありきではないし、それが目的でもないので、悩ましいですよね。量やスピードがある程度上がれば、やっている本人が楽になるので、ご自分にとってベストな状態を模索していただくしかないかなーと思います。私も日々七転八倒でノルマ倒しまくりですけど。今日も!
by yumi_in_the_rye | 2017-08-01 23:35 | 仕事のこと | Comments(7)

鋭意翻訳中  【翻訳勉強会 満員御礼 次回は募集はまたいずれ】


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